「トリチウム水」では事態を見誤る。専制政治と言葉の置き換えという日本原子力行政の宿痾<史的ルッキズム研究10>

https://hbol.jp/231052/2

いま問題になっている汚染水の海洋投棄では、「トリチウム水」という言葉が使われていますが、これも問題を見誤らせる置き換えの表現です。東京電力が貯蔵している汚染水は、トリチウム水であると同時に、放射性ヨウ素や放射性ストロンチウムなど多数の放射性物質を含んだ汚染水です。現在の除去装置ALPSは万能ではなくて、多数の核種を除去できないできたからです。

 なかでも注目すべきは、ヨウ素129で、これは半減期1570万年という非常に寿命の長い放射性物質です。時間がたてば無くなるというものではない。これが海洋に投棄されれば、沿岸に生息するワカメは放射性ワカメになってしまいます。

 また、放射性ストロンチウムはカルシウム成分に混入するものですから、あらゆる魚種に影響を及ぼします。ストロンチウムの影響は今後300年続きます。漁業者たちが海洋投棄に強く反対しているのは、充分な理由があるのです。こうした問題は、新聞では「風評被害の懸念」という言葉に置き換えられてしまうのですが、本当はそんな生易しい話ではないのです。