加藤厚労大臣の少子化対策財源に社会保険料を「使う余地はない」は本当か?

https://news.yahoo.co.jp/byline/shimasawamanabu/20230508-00348739

加藤厚労大臣の少子化対策財源に社会保険料を「使う余地はない」は本当か?

公的医療保険の制度間の資金のやり取りを見てみますと、図からは、中小企業の従業員とその家族が加入する協会けんぽでは、保険料8.3兆円、前期高齢者への上納金1.6兆円、後期高齢者への上納金2.1兆円、大企業の従業員とその家族が加入する組合健保では、保険料7.2兆円、前期高齢者への上納金1.6兆円、後期高齢者への上納金2.0兆円となっています。さらに、前期高齢者が受け取った上納金3.7兆円からさらに後期高齢者に1.6兆円上納されているのが分かります。
まとめると、現役世代から徴収された保険料総額15.5兆円のうちの47%に相当する7.3兆円が高齢世代にピンハネされています。

現役世代が今負担した保険料が今の給付に充てられている(賦課方式)のが実態です。その額は厚生年金と国民年金では34.7兆円(=厚生年金33.4兆円+国民年金1.3兆円)(2021年時点)です。

消費税は社会保障4経費(年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用)に充てられる社会保障目的税と位置付けられ、令和4年度当初予算額45.3兆円のうち24.7兆円(消費税収27.5兆円(なお、残りの2.8兆円は消費税率1%分の地方消費税収))が充当されています。

更にそのうえ、社会保障4経費45.3兆円−消費税充当額24.7兆円=20.6兆円、消費税収が必要額を下回っていますから20.6兆円の赤字国債が発行されています。この多くは現役世代やその子、孫たちの負担です。

図1 制度別の財政の概要(令和元年度)(出典)厚生労働省資料(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000980128.pdf

図2 消費税の使途(令和4年度当初予算)(出典)財務省資料(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/122.pdf